これも全部熱のせい (Page 2)

「あぁ…本当に気持ち悪い…」

薬もないからもう寝てしまおうと、スマホを置いた瞬間、突然呼出音が鳴り響いた。

どうやら私は手が滑って、画面に表示していた彰斗の電話番号を押してしまったようだ。

「や、やば…」

急いで終了ボタンを押そうとしたが、ふいに彰斗の声が聞こえてきた。

私がボタンを押すよりも、彼が電話を取る方が早かったらしい…。

「もしもし?千咲?朝からどうした?」

久しぶりに聞く彰斗の声。

彼の掠れた声から寝起きだということがわかる。

「ご、ごめん…。間違って掛けちゃって…」

「千咲、もしかして具合悪い?」

「え?」

「気のせいだったら悪いけど、なんか声からして元気無さそうだなって」

なぜ声だけでわかるのだろうか…。

私と同じように、彼も声だけで私の変化に気付いてくれることが嬉しくて仕方がない。

「ちょっと熱が…。すぐ治るとは思うんだけど…今、家に薬も食べ物もなくって…」

「熱はどれくらい?」

「さっき計ったら38.7度だった」

「結構高いじゃん。ちょっと待ってて。準備したらそっち行くから」

彰斗はそれだけ言うとすぐ電話を切ってしまった。

まさか本当に彰斗に電話してしまうなんて…。

でも正直、今の状態じゃ何も出来ないし、心細いから彰斗が来てくれるのはすごく有り難かった。

とりあえず彰斗が来るまで少し横になっていよう…。

*****

ピンポーン

部屋のインターホンの音で、私は突然夢の世界から現実へと引き戻された。

どうやら軽く横になっているつもりが、ぐっすりと寝てしまっていたようだ。

私は洗面所の鏡で軽く寝癖を直し、玄関へと向かった。

ガチャ

「わざわざごめんね…。上がって…」

「今日は休みで予定もなかったし大丈夫だよ。とりあえずお邪魔します」

彰斗が私の家に来るのは初めてではない。

彰斗は慣れたような足取りで私の部屋へと入っていく。

「これ、買ってきたから」

彰斗は手に持っていた白いビニール袋を私へ渡してきた。

中身を見てみると、袋の中には風邪薬、ゼリー、私の大好きなアイスが入っていた。

「え…わざわざ買ってきてくれたの?」

「おぅ。とりあえず今は食欲もないだろうから食べやすいものをチョイスしておいた」

「私の大好きなアイスまで…。覚えててくれたんだね。ありがとう…」

「千咲、高校の時このアイスばっか食べてたよな〜。このアイス見るとお前の顔が思い浮かぶもん。とりあえず少しでもいいからゼリーとか食べて、薬飲みな」

「うん…。ありがとう」

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