秘密の共犯者

・作

フリーターのマユは、数週間後に迫った友人カナの結婚式のお祝儀代を稼ぐ為に、単発でデリヘルのアルバイトをすることになった。アルバイト最終日、指定されたホテルに向かうと、そこで待っていたのはカナの旦那であるリョウでー。

お金がない。

数週間後に控えた友人の結婚式。

披露宴から参加するのに、お祝儀の存在をすっかり忘れていた。

奮発して、可愛いカクテルドレスを買ったことですっかり安心してしまっていたのだ。

フリーターの私に貯金はない。

毎月ギリギリな生活の中のでの3万円は、かなり高額だ。

日払いのアルバイトを色々探してみたけど、どれも日数的に間に合わない。

「どうしよう…」

正直に話して欠席する?

いやいや、それは失礼だ。

それなりに付き合いが長いカナの結婚式。

晴れ舞台をお祝いしたい。

諦めずに探して見つけ出したのはデリバリーヘルスの単発アルバイト。

本番無し、一日フルで入れば日給数万円はもらえる。

これなら間に合う。

そういう仕事は初めてで、正直怖い。

けど、背に腹は代えられない。

覚悟を決めて、募集ボタンをタップした。

後日面接に行き、採用が決まった。

人手が少ない日にヘルプとして数日、入れてもらうことになった。

最初こそは不安で、心臓バクバクだったけど、3日も出勤すると慣れた。

元々そこまで行為に抵抗はなかったし。

今日は最終日。

最後のお客さんの元へ向かう。

このお客さんのお相手が終わったら、お金をもらって終了だ。

指定されたのはビジネスホテル。

今までラブホテルで合流したり、自宅に呼ばれるパターンだったから、少し新鮮だった。

指定された階に向かい、インターホンを鳴らす。

お店のチャットトークで、既に到着したと連絡してある。

数秒して、ドアが開く。

「こんばんは、ドキドキヘルスのミナミです。本日お相手させていただきます―」

お店でつけてもらった偽名を使い、お辞儀をして挨拶する。

「え…」

相手が驚いたように声を発したのが聞こえた。

「…?」

私は不審に思い顔を上げる。

と、衝撃でフリーズしてしまった。

そこにいたのは友達であるカナの旦那さん、リョウ君。

今度参列する結婚式の、新郎だった。

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