兄さんのお泊り
社会人になった私は家を出て、都会で一人暮らしをしていた。そのため、家族とは離れ離れで生活をしているのだが、時々心配なのか義兄の卓也兄さんがこちらにやってくる。それもそのはず、私と兄さんは家族公認でお付き合いをしている。そして今日は、兄さんが久しぶりに泊りがけで遊びに来ていた――。
「あ、兄さん。元気してる?」
「んー、元気だよ。そっちは平気?ご飯は困ってない?野菜なら送るよ?」
「一人暮らしじゃそんなに野菜も食べれないって」
私が今話している相手は、義兄の卓也さんだ。
私の母親の再婚相手の息子さんで、ほのぼのとした性格の人だった。
…そんな兄さんに告白されたのは、私が引っ越す当日だった。
*****
「じゃあな、元気でやれよ」
「まあうちの子なら大丈夫よ〜」
と両親が何も気にする様子なく、私を見送る一方で兄さんはボロボロ泣きながら私を見送った。
「うおおおん、がんばってねぇ」
「兄さん…そんな顔しないでよ」
電車の扉がプシュウ、と音をたて閉まる。
両親が私を見送る中、兄はホームを駆けて私が見えなくなるまで見送る。
そして叫んだ。
「好きだよ!!!おれ!!こんな俺でよければ!!付き合ってください!!」
こうして私たちは付き合うこととなった。
両親には、「血が繋がっていないとはいえ、家族なのは忘れるな。ただ、それを忘れないなら好きに付き合いなさい」とお墨付きをもらえた。
*****
「あ、そういえば今度そっちに遊びに行くね」
「え、ほんと?うちは平気?」
「うん、母さんがたまには行ってきなさいって」
こうして、数日後。兄さんがこちらにやってくることが決まった。
*****
「にいさーん!」
「うわああ会いたかったよお!」
大量の荷物と共に兄さんはやって来た。
曰く、ホテルを取ったのでそこに泊まるとのこと。
うちに泊まらなかった理由を聞けば、「ほら、恥ずかしいし…」とのこと。
兄さんはどうして変なところで勢いがあるのに、びっくりするほど奥手なのか…。
それから二人でデートをした。
「すごいねー、会社大きいんだね」
何度か都内に来たことがあるため、兄さんは私が通勤する会社や生活圏内が見たいと言った。
そのため、二人で近所を散歩した。
カフェで普段の話をしたり、すごく楽しかった。
*****
そんな時間はすぐに過ぎて、夜になった。
「じゃあホテルに帰るね」
兄さんがそう言って、私を見送ろうとした。
けれど、私は不満だった。
どうしてせっかく会えたのに、これだけなの?
私のそんな思いが行動に出ていたのか、私は兄さんの腕を掴んでいた。
「…ッ!!我慢できなくなっちゃうよ!そんな可愛い顔されたら…」
兄さんはそう言って、困惑していたが私は腕を離さなかった。
兄さんは困った顔をしながら、「…ホテル、来る?」と私を誘った。
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