ゆるふわ君は意外と重たいオオカミ (Page 2)
デザートバーで私はベリーと柘榴のタルト、オミ君は杏とキャラメルのグラスパフェを頼んだ。
「女装はしないの?オミ君」
「だからぁ、僕は見るのが好きなの。奈緒ちゃんとかが着てるスカートがひらっとしたりするとぉ、こっちの気分がアガるわけ」
「でもお店行くとよく触ってるじゃない」
「だって触ると気持ちいいじゃん。フリルの裾とかに手を通して透けさせたり、さらさらする感触を感じるのが好きなんだ」
「ふーん」
お皿に残った柘榴の粒をつつきながら頷いた。
「今まで自分のこういう趣味って言えなくてさ、だけど大学4年の時に付き合ってた子にちょっとだけ言ってみたんだ。こういう可愛いのがあるお店に行ってみたいかもって」
オミ君がグラスの底に溜まったキャラメルをスプーンですくってぺろりと舐める。
「そしたら言われちゃったんだよね。気持ち悪いって」
ドキッとした。オミ君が言った内容にじゃない。見せてきた表情に。
「結婚とか考えてたけど、ちょっと違うかもって言われて…そっからフェードアウト」
「…やな女」
「ふふっ、奈緒ちゃんならそう言うと思った」
「結婚前に分かって良かったじゃない」
「お互いにね」
寂しそうに言うオミ君にムッとして自分のお皿から苺を一つ、オミ君のグラスの下皿に移した。
「食べな。美味しいわよ」
「…返さないからね」
言うなりパクッと食べたオミ君は、あまーいと目を輝かせてくれた。
*****
デザートバーで4杯カクテルを頼んだ私は、いい感じにへべれけになってオミ君と腕を組みながら歩いていた。
オミ君もふわふわ笑いながら私にもたれてくる。体が大きいから重いっての。
「オミ君、明日の準備いいの?」
「もうしてあるもーん。起きて荷物持って箱根行くだけだもーん」
へらっとしたかと思うと、ぎゅーっとハグしてきた。
「楽しみぃ!せっかく有休取って行くんだからぁ、美術館とか湖とかも行こうねぇ」
「分かったから離してっ、苦しい!」
バンバン背中を叩いた私に、ごめんごめんと腕を緩めたかと思うと、じーっと見下ろしてきた。
ものすごい真顔で。
「何?」
「…トイレ」
「へ?」
「行きたい。漏れちゃう」
「ウソ?!」
慌てて周囲を見回した。小さな駅前だからレストランとかはあるけど、コンビニじゃない。少し歩いて駅まで行くべきか。
「こっち」
手を引かれて路地裏に入る。突き抜けたそこは。
「え、でもここ、ホテ…?!」
ぐいっと引っ張られて、エントランスのパネルボタンを押して引ったくるように鍵を手にしたオミ君に連れられるまま、廊下を抜けて部屋に入った。
バタバタ入った部屋はやっぱりラブホテルそのもので。
「オミ君?」
私の手を握っていたオミ君がベッドにばふっと押し倒してきた。
体格が違いすぎるから当然敵わない。仰向けに抱きつかれたままの姿勢で、重いなあ、とまた思っていたら、
「何で抵抗しないの?」
ポツッとオミ君が呟いた。
最高です
終わり方が、実際にどういう行為をしたのか想像を掻き立てられてドキドキします。
りん さん 2021年7月3日