枯れたヤドリギの下でキスをする (Page 4)
12月25日 ヤドリギの上で。
絵崎実梅の回想。
夕方の礼拝から戻ると、自室のベッドの上で桜子は何かを編んでいた。
「桜子、クリスマス礼拝サボったの?」
今まで桜子が礼拝をサボったことなどない。
桜子は顔も上げずに答えた。
「礼拝なんてクソくらえよ。…それよりも見て!できたわ」
吐き捨てると一転し、桜子は嬉しそうに手に持つものをわたしに見せてくれた。
「…リース?」
「そう。お昼休みに裏の林を散策しているときに見つけたの。ヤドリギよ、これ」
リースは小ぶりだが、緑の葉の間に金色の可愛らしい実が散らばっている。モミで作るものより可愛い出来だと思った。
桜子はできあがったリースを、わたしの頭に被せた。
窓際の斜陽が桜子の髪に光の輪を乗せる。
天使のようだと思った。
「実梅、ヤドリギ伝説を知ってる?ヤドリギの下ではキスを拒めないのよ」
いたずらっぽく桜子が微笑む。その目にはうっすら涙が光っていた。
ふらふらと桜子の隣に座る。その手を取って握りしめ、目を合わせる。
桜子と一緒いられる時間は、1週間も残されていない。
我らが神は……いない。
「もちろん」
わたしは桜子の頬を包んで引き寄せた。桜子が頬を染めて瞳を閉じる。
桜子の唇は、切ないほど甘い味がした。
唇を離すと、細く長く、糸が張った。
大粒の涙が瞳から溢れる。
もう1度口を吸う。下唇を甘噛みしたり、吸って舐める。
形に沿って唇を舌でなぞると、花開くように、次第に桜子の唇はわたしの舌を受け入れた。
開いた隙間からそろりと舌を入れ、上顎、歯茎の裏、丁寧に撫でるようにくすぐる。
舌の裏を舐め上げながら、そっと目を開けた。
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