男運の悪い私の青い鳥は幼馴染でした

・作

なぜかいつもダメンズに引っかかってはフラれる男運なし、見る目もない女子大生美月(みづき)。またしてもフラれ、幼馴染の翔(カケル)に愚痴ってたら『俺じゃダメなの?』と言われ。男として見たことないというと、じゃあ今から考えてとキスされて…

「俺ら、やっぱ合わないじゃん?別れようぜ」

彼氏からそんな言葉と共に一方的に捨てられた。現在大学三年、通算二十回目の破局である。
彼氏と別れたその足で家には帰らず、隣の家のインターフォンを押した。涙でぐっしゃぐっしゃの顔した私を見て、翔は大きなため息とともに部屋に通してくれた。

物心ついた時からお隣さん。幼稚園から中学まで一緒に通った幼馴染。高校は別の学校だったけれど、家族ぐるみで仲が良く、気が付けばいつも隣にいてくれた大切な幼馴染。
母から聞いた話によると小さい頃、

「将来の夢は翔君のお嫁さん」

とか言ってた時期があったとのことだ。そうだからというわけでもないが、失恋すると翔に会いたくなる。会って話を聞いてほしくなる。翔は私を慰めることもなだめることもしないけど、最後まで話を聞いてくれるからだ。そのパターンが出来てるからか、泣きながら訪ねると大体最初はこの言葉で始まる。

「で、今度は何でフラれたの?」

「あ、合わないって…」

「またかよ」

差し出された箱ティッシュから二枚ほどティッシュを取り勢いよく鼻をかむ。黙ってゴミ箱を差し出され、ティッシュを捨てると、オレンジジュースの入ったグラスを渡された。一気に半分ぐらい飲んだら、またぼたぼた涙がこぼれる。

「またとか言わないでよ。すごく好きだったのに、飽きたからってあんまりだと思わない?!」

あーはいはいと適当な相槌に構わず、私はまくしたてる。
付き合った当初は優しかったのだ。そう最初の二週間ぐらいは。かつての彼氏みんなそうだった、付き合って最初のころは皆優しいのに、三週間を過ぎると急激に冷たくなるのだ。

「何で皆冷たくなるわけ、私の何が悪いっていうのよ?」

「めんどくさい酔っぱらいみたいな絡み方すんなよ。美月の悪いところ?男運のなさと見る目がねぇとこだろ?お前の歴代彼氏は総じてろくでなしと名高いクズばっかりだった」

「ぐうっ!」

流石幼馴染と言ったところか。翔は私の恋愛遍歴の全てを事細かに知っている。私の黒歴史の全てをその手に握っていると言っても過言ではない。そんな翔からの正論にはまさにぐうの音も出なかった。

「私のブルーバードはどこにいるの?」

「お前その童話好きだよな。てか、話聞くたびに思ってたんだけど、俺じゃダメなの?」

驚きが悲しみを上回り、その衝撃で涙が止まってしまった。翔の方を見ると翔も私を見ていた。冗談かからかわれたのかと思ったけど、翔の顔は真剣で茶化せる雰囲気じゃない。

「そ、そんなこと急に言われても、翔は大事な幼馴染っていうか…。男としてどうこう思ったことないし…」

「じゃあ、今からでいいから考えてよ。俺にとっては美月はかなり前から女の子だけどね」

涙の痕をまだ残す私の頬を優しく撫でる。私よりもずっと大きくて骨ばった手。大きな鼓動は緊張か違うものなのか、答えがだせないままためらいがちに触れられた唇を受け入れた。

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