禁断の恋を演じる二人は恋人同士。舞台裏では台本にないエッチなことを?!
演劇サークルで禁断の恋に落ちる男女を演じる二人は、リアルでも恋人同士。ベッドので上は恥ずかしがりでなかなか喘いでくれない彼女に、彼氏が仕掛けた甘いアドリブ…。
舞踏会が盛大に催されていた。
豪華絢爛な衣装を身にまとって踊る貴族たちの中に、真珠のようにひときわ艶めく男女が、お互いを見つめ合っている。
舞踏会を主催する王室の姫と隣国の王子だ。
『王子…今夜もとても楽しかった…。ああ、この後、眠れるかしら。まだあなたとダンスを踊っているような心地なのです。王子…次はいつ、お会いできますか?』
『姫…私はあなたに、お伝えしなければならないことがあります』
『王子…?』
『私は実は、王子ではないのです。このお城に仕えるただの庭師です。庭園をお散歩されているあなたをお見かけしたとき…そのバラのように気高く美しい佇まい、春の日差しのように優しいまなざしに、恋をしてしまったのです。』
『まあ…!』
『おそらく、すでに姫の召使は私が庭師であることに感づいているでしょう。あなたとお会いするのはもう終わりにしなければなりません。姫、どうかお幸せに…』
『そんな…ああ、待って!行かないで!!!』
去り去る王子を姫が追いかけるところで、照明が暗くなった。
「はい、今日はここまでにしましょう!お疲れさまでした!」
王子を装った庭師を演じる幸秀は、姫を演じる由梨花の恋人だ。
社会人の演劇サークルで二人は出会った。
最初に由梨花を見たとき、こんな大人しそうな…言っちゃ悪いけど、ちょっと地味な子が姫役か、と思った。
でも、すぐにそれを恥じた。
初めての合わせ稽古のときだった。
サークルのOGが見学ついでに、自宅に忘れていたドレスを持ってきた。
「急にごめんねー。これ、去年私の引退公演で使ったやつ。すっかり返し忘れてた。由梨花ちゃん、せっかくだから試しに着てやってみたら?」
それを聞いた由梨花は目を輝かせながら、キャストの皆を見て言った。
「あの…みなさん、ちょっとだけ、練習始めるの待ってもらえますか?本当に、すぐ準備しますので…!」
「おっ、いいねぇ!最初の稽古から気合十分だね!」
監督も乗り気だった。
「由梨花ちゃん、私も着替え手伝うよ!髪も簡単で良ければセットできる!」
OGはそう言って、小走りで由梨花と楽屋へ向かった。
しばらくして、衣装を身にまとって戻ってきた由梨花の雰囲気はガラリと変わり、気品に満ちた「姫」そのものになっていた。
幸秀はまるで魔法にかけられたように庭師になりきって、姫に恋をした。
舞台の稽古が終わった後、由梨花の服装や髪形は元にもどっていたけれど、
姫に一目ぼれした庭師を演じる幸秀にかかった魔法は、解けることがなかった。
稽古を重ねるごとに、由梨花の魅力に気づき、より好きになっていった。
由梨花も、幸秀のことを舞台の外でも意識するようになった。
ある日二人きりで、練習後の後片付けをしていたとき。
由梨花は舞台上でモップをかけ、幸秀は舞台の下で物品整理をしていた。
ふいに、照明が全て消えて真っ暗になった。
「えっ!?なに!?停電?幸秀さん、どうしよう…!」
思わずモップを落として動揺する由梨花に、幸秀は声をかけた。
「大丈夫、確か舞台袖に懐中電灯があったはず…僕が行くから、動かないでいて。」
「うん…」
しばらくして、急にスポットライトが舞台に当たった。
すると由梨花の前に、幸秀が跪いていた。
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