欲求不満の私を満たしてくれたのは (Page 2)
ベッドに座って簡単な近況を話す。机の椅子しかないから話すときはいつだってベッドに座って話した。貴斗を見るとシンプルなピアスが光っているのが目に入った。高校の卒業時は開けたいとは言っていたけど、まだあいてなかったのに。
「ピアスあけたの?」
「和華はあけないの?俺があけてやろうか?」
「病院でやってもらおうと思って」
多少血が出てもすぐ消毒してくれるだろう病院の方が安心だ。自分で開けるのは失敗して血みどろになったらどうしようという不安がある。ピアッサーもちょっと怖い。
「最初はあの音が何とも。失恋したからピアスあけたとか乙女チックというかセンチメンタルというか」
そういって自嘲気味に笑う。貴斗はこんな顔をしていただろうか。幼さが抜けてシャープな輪郭、骨ばった手、私の知らないコロンの匂い。かつてはあんなに一緒に過ごした幼馴染のはずなのに、知らない人のようだった。
「もう20歳過ぎたもんね?」
「何急に。まあ、21歳だし?こんなものがあっても別に驚かないけど」
貴斗の手に握られたのは親には内緒で買ったバイブだった。パステルピンクの愛らしい色、手に馴染む小型タイプ。
小さいから隠すのが簡単で親に見つからないように隠しておいた。親にさえまだ見つかっていないというのに、一体どうやって見つけたのか。
羞恥やら動揺やらでしばらく声が出なかった。
「な、なんで?親にも見つかってないのに?どうして?!」
「机の一番下の段、二重底の下。お前が受験中マンガ隠す場所欲しいって言って俺が作ってやったの忘れた?俺が作ったんだから開け方も知ってるに決まってるだろ」
当時流行っていたマンガを真似て引き出しを二重底にしてもらった。机の一番下の引き出しは結果として5センチほどの隙間がある。
当時買っていた月刊誌が丁度入るサイズ。開け方にちょっとコツがあり、ぱっと見は気が付かない。手先が器用な貴斗が受験勉強の片手間に息抜きとして作ってくれた。今思い出した。
「そうだった…。だからって普通開けないよね、プライバシーってやつが…」
「久しぶりに来て思い出して、好奇心が抑えきれなくて。でもこれ使用感ないよね、一緒に隠してあったコンドームも減った形跡ないし」
「親がいないときに電源入れてみたら、意外とモーター音がうるさかったの」
性能ではなく値段を重視したため静音ではなかった。初心者におすすめのやつで複雑な動作や機能もついてない。
「もったいないし使ってみる?」
「え、いつ?」
「今。俺はうまいよ」
ちゅっと頬に短いキスが落ちた。
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