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もういい時間だけど、まだ帰るわけにはいかない。通常業務は終わっているけれど、外国の方は時差の関係で夜遅くメールが来ることも度々あり、その対応に追われている。全部習った言語だが、量が多くて。少なく見積もって前の3倍はある。メールに目を通しているとガチャリとドアが開き、商談に出かけていた社長が帰ってきた。

「お疲れさま、別に帰りを待ってなくてもいいんだぞ?」

「お疲れ様です、社長。お帰りになったところ申し訳ないのですが、こちらとこちら早急にお返事がいただきたいとのことで、あと…」

社長はまだ32歳。代替わりしたばかりだが、業績は右肩上がり。
オックスフォード大卒の高学歴に加え、高身長、スタイル抜群。そして凛々しいルックス。彼女になりたい女性なんて社内でも社外でもはいて捨てるほどいるだろうけど、不思議と浮いた噂を聞かない人だった。

「仕事は慣れたか?」

「いえ、至らぬところばかりで。反省の日々です」

「よくやってるよ。前任と同じようにする必要はない。あれ程出来る秘書もそうはいないが。西宮は柔軟で、対応力においては前任以上だ。そこを評価してる」

「ありがとうございます…」

急にそんなことを言われるとは思わず、あまりに不意打ちで照れる。顔色を悟られたくなくて、いつも通りの表情を作る。

「社長、お茶いかがですか?コーヒーでしたらすぐに…」

かくんと足がもつれた。あわや地面に激突というところで、がっしりと体を支えられる。

「も、申し訳ありません、社長」

「そこは謝罪ではなく、礼を言うべきだぞ」

「ありがとうございます」

「西宮、今から明日の昼まで休暇な。一切の業務を禁じる。終電はもうないだろうから、滞在は許可。はい、復唱」

「今から明日の昼まで休暇。一切の業務禁止。社長室の滞在は可とする。確かに承りました」

条件反射だった。仕込みに仕込まれたやり取り確認のための復唱の定型文そのままだ。なぜか支えられた腕がそのままで、後ろを振り返るとまともに目が合った。端正な顔が目の前にあるのは心臓に悪い。社長の済んだ瞳に私の姿が映りこむ。
社長の大きな手が頤にかかる。その瞳に吸い寄せられるようにどちらからともなく唇が触れた。

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感想・レビュー

1件のレビュー

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  • 非現実的な設定

    最初に秘書課で何ヶ国語も仕込まれる研修、と出てきた時点で非現実的で読むのをやめてしまった。仕事したことありますか?

    5

    うーん… さん 2023年9月30日

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