バレンタインのアフターストーリー。年下彼氏とチョコより甘い愛の時間。

・作

ある冬の日のお家デート。せっかくの時間なのに始まってしまった口喧嘩。原因はバレンタインデーの、些細な想いのすれ違いだった。仲直りのハグから始まる濃密な愛の情事。いつも甘えてくる彼氏のSっ気全開のギャップに欲情してしまって…

「俺、すっごい悲しいんだけど!」

『私だって、悲しかったんだから!」

バレンタインを少し過ぎたある日の昼下がり。私は年下の彼と喧嘩の真っ最中。

彼と私は同じ会社で働く上司と部下で、一緒に仕事をしていく上で自然とお互い惹かれ合い、恋に落ちた。

公私混同しないためにも、会社では私たちの関係は秘密にしている。

いつもは温厚で優しい彼が怒っている原因は、バレンタインに私が彼にチョコを渡さなかったこと…。

「家でチョコレート作ってるの見てさ、俺のだなって思ったじゃん!期待してたじゃん!なのに会社の人にだけ渡すなんて!」

もちろん、理由もなく彼に渡さなかったわけではない。

あの日、彼には特別違うチョコレートを作っていた。

作ってはいたのだけど…渡せなかった…。

『翔太くん、会社の女の子にチョコたくさん貰って、私の目の前で美味しい美味しいって食べてたじゃん!別に私からのチョコなんて、無くたっていいでしょ』

そう、ただの嫉妬だ。

可愛らしいルックスに加えて、誰に対しても優しく明るい性格の彼は、社内に多くのファンを作り出していた。

彼女は私なのに…そんな激しい嫉妬心が渦巻いて、胸の奥をぎゅうっと苦しめて、渡せずにバレンタインを終えてしまったのだった…。

「そりゃ甘いモノ好きだし、貰ったら食べるよ!有菜の前で食べたのはヤキモチ妬かせたかったからだよ!でも有菜くれなかったじゃん!彼女からもらうバレンタインは特別なのにさ!」

1時間近くも言い合いをしていると、次第に冷静さも取り戻してくる。

『そうだよね、ごめんね、私…大人げなかった。会社の子ってわかってても、私以外の女の子から貰ったチョコを美味しそうに食べてたの見たらなんだか悲しくなっちゃって…ただの勝手なみっともない嫉妬なの…』

「ごめん、俺も言い過ぎたし、無神経だった。俺にとっては有菜が作ってくれた物が一番だし、それ以上のものなんてないから!」

あぁ、なんてまっすぐなんだろう。

嫉妬して意地を張っていた自分がバカらしい。

『嬉しい…ありがとう』

「もう来年から俺以外の男たちにはあげなくていいから!義理チョコすらも嫌だし!!」

『うん』

「じゃあ、はい。仲直りしよ?」

そう言って両手を広げて、自分の膝の上をポンポンと叩く仕草。

翔太くんがいつも私だけする“こっちにおいで”って合図。

嬉しくなって、その膝の上に横向きに座った。

「捕まえた!」

ギュッと抱きしめられて、翔太くんの香りに包まれて、私の鼓動は速くなる。

「ねぇ、今からシよ」

『す、するって?』

「とぼけちゃって。分かってるクセに」

『…わかんない…』

わかってる。

わかってるんだけど、無垢な女を演じてみる。

「ほんと有菜って嘘つくの下手だよね。顔、真っ赤だよ。そういうところが可愛いんだけど」

私にまっすぐ向けられる愛に、鼓動の高鳴りは増すばかり。

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