子供扱いじゃなくて女扱いして
隣に住む7歳上の徹が好きななずな。中一の時、彼女とキスをしている徹を見て失恋しても諦めきれない。ある日、就職して実家を出たはずの徹が帰ってきた。昔と変わらず子供扱いする徹に焦れたなずなは行動に出る。子供扱いが女扱いに変わる瞬間…
うちの隣に住む7歳上の徹くんを子供の頃『お兄ちゃん』と呼んで慕っていた。徹君の後ろを付いて回っていた時期もある。私にとって徹君は何でも知ってて、何でもできて、かっこいいヒーローのような存在だった。
「大人になったら、お兄ちゃんのお嫁さんにしてね」
「ははっ、ありがとう」
笑っていつも本気にされなかったけれど、私はいつだって本気だった。それが恋だと気が付いたのは小学校を卒業したころだったけれど。
徹君は大学生になっても、時々勉強を見てくれるようになった。自分は特別だと思っていた。
ところが中学一年生の時、門が開く音がして徹君が帰ってきたのかと二階部屋の窓から外を見る。徹君と知らない女の人…。
周りをうかがって二人の影が重なった。胸がつぶれるような思いだった。引き裂かれたように胸が痛い。徹君の家に入っていく二人はどう見てもお似合いの二人。
自分が思っている以上に子供だってことに愕然として、枕に顔をうずめてわんわん泣いた。
*****
人生最大の失恋に変わった恋を進めることもできないのに、諦めもできないまま先日20歳になった。
高校から女子高で大学も女子大。友達の紹介で何人かとあったけれど、これといった進展もなく、新しい恋もできないまま。
徹君はというと就職と同時に家を出て今は一人暮らしをしているらしい。前はお盆とか時々帰ってきて、それこそ昔みたいに勉強を見てくれることもあったけれど、それも高三まで。大学入学とともにぱたりと会わなくなった。
ところがある日手紙を取りに玄関を出ると、隣の家の門を開けている徹君がいた。
「久しぶりだな、なずな」
「徹君!帰ってきたの?」
「帰ったというかー、会社が移転するから新居決まるまでちょっといるだけ。一応ここからも割と近いし。一人暮らしは続けるけど、前よりは近いとこ住むことになるかも」
そんな風に笑って言う徹君をみて、やっぱり好きだなと思った。まだあきらめられてないんだな私。徹君は人たらしなところあるからな。罪な男だ。
「暇なら、遊びに来る?なずなが好きだったゲームまだあるよ」
「い、行く。お母さんに言ったらすぐに行くから」
ドア開けとくと言って徹君は家に入った。徹君の家行くの久しぶり。そりゃ徹君がまだ小学生だったときとか中学生だったときは親がいないときとかはよく預かってもらってたけど。それも中二ぐらいだし、もう6年ぐらい行ってない。胸がどきどきと高鳴る。
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