お兄ちゃんの親友と恋人関係はじめます
お兄ちゃんに呼び出された湊。そこで再会したのは兄の親友の朋樹。思い出話が弾むなか喫茶店でコーヒーを掛けられ、駅から近い朋樹の家に行くことに。慣れない女の子扱いにときめく中、朋樹を男の人として意識してることに気が付いて…
スマホにお兄ちゃんから急にメッセージがきた。会わせたい奴がいるから、大学の最寄り駅で待ち合わせしようと。お兄ちゃんが急なのはいつものことだけど今日は一段と急だ。
「湊、こっちだ」
「いつも急すぎ、お兄ちゃん!」
「いいから。覚えてないか?朋樹。小坂朋樹」
「小坂、朋樹…。もしかしてともにぃ?」
三つ上のお兄ちゃんとは時々鬼ごっことかして遊ぶことがあった。お兄ちゃんの親友だったともにぃはもう一人のお兄ちゃんみたいに思って慕っていた。
「よく覚えてたね。前会った時なんて今の半分くらいの大きさだったのに、いつの間にか大人になったね」
大きな手で頭を撫でられる。笑った顔には昔の面影が残っている。前に会ったのはもう10年くらい前のことだ。進学と共に時間が合わず、自然と会うことはなくなった。
「仕事はじめてから忙しくて暫く連絡とってなかったんだけど、この前居酒屋でバッタリ。最近はまた飲みに行ったりしてて。今日暇だっていうからお前呼んだ」
それでこんな急に呼んだのか。で呼び出したお兄ちゃんはというと、彼女との約束があると嵐のように去っていった。
「アイツは本当に変わらないな、昔から嵐みたいな奴だった」
「お兄ちゃんの中学の時の別名って『歩く台風』だったよね」
そう言う人だ。10年ぶりに会った人を二人きりでおいていくような。ここですぐに帰るのも悪い気がして、まごまごしているとともにぃが
「よかったらお茶でもしようよ。思い出話しない?」
というので、駅チカの全国チェーンの喫茶店で思い出話をすることになった。
*****
「動物園とか水族館とか遊園地とかよく行ったな」
「うん。水族館また行きたいなぁ」
話が弾み、言葉遣いも大分砕けた。少し冷めたコーヒーを飲みながら話していると、短い悲鳴と共に何かが足にかかった。
「熱っ!」
「ごめんなさいっ!よろけちゃって、コーヒーが…。火傷とか大丈夫ですか?!」
「火傷は大丈夫ですけど…」
店員がモップ片手に寄ってくる。どうやらヒールが折れてよろけた女性が運んでいたコーヒーがかかったらしい。火傷こそないけど、スカートにコーヒーが染みていた。
「火傷は大丈夫だね。コレよかったら腰に巻いておきな。多少はマシだから」
きていたパーカーを膝にかけてくれた。お姉さんはしきりにぺこぺこして、クリーニング代です。と明らかにクリーニング代には多めの代金を渡してくれた。
「一度洗わないとね。脚もベタベタだろうし。俺の家近いから。一回手洗いして、クリーニング出しに行こうよ。着替えないとだしね」
私の手を引いて立ち上がる。パーカーを腰に巻くとサイズが大きいから染みが綺麗に隠れた。流石にちょっと早歩きだったけれど、気が付けばともにぃが車道側を歩いている。女の子扱いがなんだかくすぐったい。
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