三十路間近な私が年下バーテンダーに心揺れ動く (Page 4)

 彼の家はバーからすぐだった。歩いて十分ほどの距離で分かったことは、あのバーは彼が経営するお店だということと、二十八歳と思ったより若かった事だった。

お酒が好きでこの仕事を十代から始め、やっと自分のお店を出して二年目になるらしい。そんなことを話す彼はお店での雰囲気とは違い、可愛らしい笑顔を浮かべていた。

 家に着いてすぐ、彼は「酒まだ飲む?それともチューしていい?」と髪を撫でながら聞いてくる。ここで酒を飲む、と答えたらどんな反応をするのだろうとイタズラ心が顔を出したが、「お好きな方どうぞ」と目を閉じた。

 ゆっくり彼の唇が重なって、私の唇を啄む。イケナイことをしているようなドキドキが私を襲う。

 彼の唇が頬、耳へと滑り、耳たぶにキスを落とした。その間もずっと大きな手が私の髪を撫でていて、その感触がとても気持ちいい。男の人に頭を撫でてもらうなんていつぶりだろう。くすぐったいような、つい甘えてしまいたくなるような手だ。

「ベッド行こうか」
「うん」

 部屋は2LDKでベッドルームは見えているのに彼は私の手を取ると優しく握り、連れて行く。慣れてるなぁと思いながらも心地いい。こういう男性はモテるのだろうなぁ。

 ベッドサイドに辿り着くと彼は優しく私の肩に手を置き、腰掛けるように促す。思ったより沈んだせいで後方へ倒れこむ私の背中を支えながら、彼が私に覆いかぶさる。ふわりと彼の匂いが鼻をかすめた。嫌味のない香水の中に彼の香りがする。

 すぐに触れた唇は先ほどよりも熱を持っていて、私はそれに応えるようにつぐんでいた唇を解く。すぐに滑り込んできた熱い舌が私の歯列をなぞり、私の下に絡まる。ぬるりと絡みつく巧みな舌に背筋がゾクリと震えて、沼の底へ沈んでしまいそうな感覚に襲われた私は彼の腰に腕を回し必死にしがみつく。

「…可愛い」
「…」
「ああ、やばい。凄いえっちな顔してる」

 私そんな顔してる?そう聞こうとしたのに再び重ねられた唇によって封じられてしまった。何度も角度を変えて触れ合う唇。それだけなのに身体の芯をギュッと握られてるみたいに痺れていくのが分かった。なんだろうこの感覚は。今まで感じた事のない感覚に、私はゆっくり目を閉じた。

 ふと上半身に触れる冷たい風を感じて目を開けると着ていたニットがたくし上げられていて、彼は私の背中に腕を回すといとも簡単にホックを外す。

プチンという小さな音とともに締め付けから開放された胸を掬うように彼の手が包み込んで、ゆっくり弄ぶ。ああ、気持ちいい。暖かいと言うより熱い彼の指が時折胸の先端を転がし、その度に漏れる私の吐息は甘ったるくて耳障りな音だった。

 彼のもう片方の手が私の体を滑り、ロングスカートをたくし上げ、内ももを撫で上げた。ビクリと反応したのを楽しそうに「くすぐったい?」なんて聞く。

「くすぐったい」と答えると「可愛い」とまた言う。やたら甘やかされている感じに心地良さを感じながらも恥ずかしい気持ちが込み上げる。もう三十路を迎える女を可愛いなんて、何を言っているんだろう。

でも悪い気はしない。何よりそれを言う彼の表情が好きだった。優しくて、でも熱を持った目。可愛いのに色気がある感じ。

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