私だけの特別マッサージに蕩ける夜

・作

デスクワークで肩こりに悩む27歳の楓。偶然会社の同僚にチラシをもらい、人生初のマッサージを受けることに。朔夜と名乗ったマッサージ師の施術を受けていると、隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきて…。つい、当てられてしまった。イケメンマッサージ師と刺激的な夜。

デスクワークばかりしているせいか、最近肩こりがひどい。肩こりに効くストレッチだとか、湿布だとかやってはみてるけれど、気休め程度にしかならない。
そんな事を聞いた同僚が

「肩こり?あ、じゃあこのチラシあげるよ。駅前で配ってたやつだけど」

と一枚のチラシをくれた。マッサージ店のチラシ。完全個室、指名制度、予約制度あり、そしてリーズナブル。なによりこのチラシ持っていったら、10%オフ。

「ありがとう、行ってみる」

そんな訳で私は初めてマッサージを受けてみることにした。

*****

仕事後の夜19時、雑居ビルの3階。ビルの見た目よりずっと清潔感溢れる待合室だった。

「あの、予約はしてないんですけれど…」

「予約なしの場合は指名フリーとなりますが、よろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

「ではこちらの用紙の太枠の部分ご記入お願いします」

名前と住所とスマホの番号とメアド、施術箇所は肩にチェックを入れ、受付に渡す。受付のお姉さんはにこりと笑い、すぐに準備いたします。といって、五分もしないうちに施術室に通された。

施術前にこちらにお着替えくださいと言われ、白いハーフパンツと白いTシャツを渡される。よかった、エステみたいにタオルだけかと思ってた分ホッとした。渡された施術着は洗剤の匂いがした。着替えて出ると、スラリとした男性が施術台を整えていた。

「あ、お着替え終わりました?初めまして、今日施術を担当させていただく朔夜と申します。重点的にやって欲しいところが肩ですね。ではこちらにうつぶせになってください」

さっぱりとした顔のイケメン。こういう職業だからか、清潔感があった。短く整えられた爪が好印象だ。

「お願いします」

そう言ってうつぶせになる。ほんのりとイランイランの匂いがした。アロマキャンドルとかあるのかな。グッと肩を押され、

「あっ」

と声が出た。絶妙に辛い位置だった。

「痛かったですか?」

「いえ、あんまりいい位置だったので…。すみません」

「ここ、すごく張ってますよ。辛かったでしょう。首筋も背中も腰も張ってますね。肩を重点的に上半身ほぐしていきましょう」

「はい、お願いします」

丁寧に肩をほぐし、首筋、背中、腰と順調に指圧してくれる。気持ちいい。温かい手が労わるように触れてくれるのがこんなに気持ちいいなんて。マッサージとかもっと早く来ればよかったな。ついウトウトする。

「はい、次仰向けになってください。腕の方も少しやっておきましょう」

「は、はいっ。ウトウトしちゃって…」

「そういう方多いですよ。お疲れ様です。温めると目の疲れもとれますよ」

そっと目に温かいタオルを置いてくれた。瞼が温まるのを感じる。二の腕を指圧されて、そんなところも凝っていたんだなと思うくらい気持ちよかった。

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