小悪魔は可愛い先輩を翻弄する

・作

OLの羽衣(うい)は、部下で年下の翼と付き合っている。公私混同はしないと言っているのに、勤務中でも人目を盗んでキスしたりと翼は遠慮なし。困るのに強く出れなくて、気が付けばいいなり?!年下の小悪魔と人のいないオフィスでドキドキエッチ!

入社して四年目。この会社は暗黙のルールみたいなものがあり、新入社員の教育係は三年目から選ばれる。いよいよ来ると覚悟した三年目。その時の新入社員とこんな関係になるとは一体誰が想像できたのか…。

「新津君、前に担当したところで話があるの。15分くらいで済むから。3番ブースが空いてるわ」

「はい、羽衣先輩」

「名前で呼ばないで」

うちの会社には会議室のほかに小規模なミーティングルームがいくつかあり、仕事の話で使うことが多々ある。空室のプレートを使用中に変えて、扉を閉めた。

「勤務時間中は名前で呼ばないでって言ったはずよ」

「何で?いい名前じゃん。っていうか誰も気にしないって、実際他の人に注意とかされたことないし」

「私が注意してるのよ、まさに今ね!言ったでしょ、公私混同はしないって」

私が初めて持った後輩だ。新人のうちは先輩から仕事を学ぶものだ。かつての私もそうだった。で、教育係として私が面倒見ることになったのが新津翼君だった。コミュ力が高く社交性の高い彼は正直、この仕事にめちゃくちゃ向いてる。私以上に向いてると思う。

なので、教えることはそこまで多くなかった。
教育期間終了と共に彼と付き合うことに…。
一体どうしてこうなったのか分からない。まったく警戒してはいなかったが、簡単に絆されるほどチョロい女ではなかったはずだ。

強いて言うなら、子犬みたいな顔して翼は実は大型肉食獣だったところだろうか。
子犬という皮をかぶった、狼だった。男は狼なんて言うが、まさにそれ。

「ねえ、羽衣先輩」

「だから、名前で呼ばない」

「主任にこれから先輩と一緒に営業回って欲しいって言われてて」

「ああ、それなら私も今朝聞いた。その話で呼んだのよ。と言っても、よく考えれば移動中の車で十分、あと10分ぐらいしたら出るから。準備してね」

ファイルを開きながら、腕時計を見る。私もそろそろ準備しないと。ふっと腕時計に影が差すと同時に、軽く唇が触れた。

「隙あり。気を抜いちゃダメだよ。仮にも二人っきりなんだから」

「ばかっ!」

「羽衣先輩、可愛いね」

くすっと微笑んでそんな甘いことを言う。ペースを乱されっぱなしだ。強めに背中を叩いてやった。出る前に鏡見ないと。あと、グロスを塗り直そう。

*****

つつがなく、商談は終わった。だけど、

「話長いんだよね、担当の人。これから在庫確認か」

「俺が在庫確認やっとくんで、最終チェックと報告お願いします」

これは完璧残業だ。会社着くとすでに定時は5分ほど過ぎていて、オフィスは閑散としていた。

「主任、ただいま戻りました」

「おう、遅かったな。じゃ、俺も帰るか。残業は2時間以内な。過ぎたら俺が課長に怒られるんだからな」

「はい…」

最近は労働基準法がうるさいらしかった。後は電気代などコストの削減だろう。

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