傷ついた私に彼氏が優しい消毒してくれました

・作

幼馴染の颯と付き合っている女子大生の鈴香。ある日、ゼミの飲み会で先輩に無理矢理キスされてしまって。無理矢理とはいえ颯を裏切ってしまった気がして、泣きながら謝ると『そんな記憶、俺が消毒して消してやる』と優しく触れてきて…。優しい彼氏との消毒エッチ。

どうしても断れなかった、ゼミの飲み会…。お酒は苦手で、そもそもお酒の席が苦手。
周りがべろんべろんのなか素面だとテンションについていけない。

付き合いで一口だけ口をつけたピーチチューハイは見なかったことにして、さっきからジンジャエールを飲んでいる。炭酸だとお酒に見えるからだ。特にジンジャエールはいい。大体どこにでもある。

「ねえ~、飲んでる~」

「せ、先輩、飲みすぎですよ」

二つ上の男の先輩がえ~とかいいながらベタベタと肩を触ってくるので、さりげなく押しのける。酔っぱらいは理屈が通じないから嫌だ。アルコールは正常な思考や理性をことごとく奪っていくものらしい。素面ならこの先輩だって、気のいい先輩なのだ。素面なら。

「彼氏、幼馴染なんだって~?ずっと一緒とか飽きない?」

なんで知ってるんだろう。確かに彼氏の颯は小さい時からずっと一緒にいた幼馴染だ。まあ、それなりによそよそしくなった時期もあったけど、颯がいないと隣が寂しくて。

いつから好きだったかとかは分からないけど、収まるところに収まった。優しくて、頼りがいがあって、カッコいい颯は自慢の彼氏。
確かにずっと一緒にいるけれど、飽きるなんて言葉は縁がないと思う。

「付き合ってからの方が知ることの方が多くて、飽きるなんてありませんから」

「へー、意外。じゃあ、他の男知らない感じ?」

「それに答える義理はありません」

セクハラまがいの質問はピシャンッとシャットアウトする。ヘタに誤魔化したりするとさらに追及され、嘘に嘘を重ねるような面倒な事態になる。だからこの答えは間違ってないと思った。

「固いな~」

強い力で肩を掴まれ、無理矢理キスをされた。押しのけようとしているのにびくともせず、舌を入れかけられて手ではなく足が出た。

「いい加減にしろっ、この酔っぱらい!ふざけんなっ、信じられないっ!」

グロスがとれることも構わず、ごしごしとおしぼりで唇を擦る。バッグを取り立ち上がった。

「帰らせてもらいます!」

周りのなだめる声などまったく聞かずに店を出た。

*****

「ということがあって、ごめんなさい颯」

ぼろぼろ涙が零れる。無理矢理のキスとはいえ颯を裏切った気がして、店を出たすぐ後に颯に連絡を入れた。

今にも泣きそうな顔で一人暮らしの颯の家へとやって来た私を見て、すぐに抱きしめてくれた。それと同時に今までこらえていた涙がこぼれ、事の顛末を颯に話した。
私の話を黙って聞いていた颯が私の涙をぬぐう。

「鈴香は何も悪くないよ。大丈夫、裏切ったとか思わないから。寧ろ、正直に話してくれて良かった」

「ごめんね、颯」

「謝らなくてもいいよ。もうごめんはなし」

またぐずぐず泣いてる私を抱きしめて、あやすように背中をさすってくれる。ようやく気持ちが落ち着き、涙が止まっても、颯は私を離そうとはしなかった。

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